『今日はあなたがシーカー。十田里花子さん。』
〜ガンジタ-アルビカンス〜
気が付くと私はロープレの町みたいな所にいた。
「どこよ、ここ?」
隣に居た茶髪の女の子が自分を守る様に腕を組んで立っていた。
「っていうかアンタ等、だれなの?」
頭ツンツンの怖そうな男の子が言った。
私と茶髪の他に三人。知らない人が居た。
「アタシは真由っていうんだけど?」
茶髪は真由って言うらしい。
「さくらー!わたし桜!!」
真由の隣の小さい子も軽く飛びながら叫んだ。
「じゃ、なくて何者ってことだろ?」
坊主頭の人が言った。この人大きいな。
「そだよ、坊主の言う通り。」
ツンツンさんが言った。
「坊主っていうなツンツン。草狩だ。」
「ツンツンじゃねぇょ。樋村!」
また、話が脱線しそうだな。
「で、みんな何者なの?」
桜、ちゃん?が言った。
「知らね、気が付いたらここに居たし。」
ツンツン…、樋村さんが言った。
「わ、私も。」
意を決して口を挟む。だってみんな怖そう。
「おばさん、何してたらどうなったの?」
真由さんが言った。おばさん?私!?
「おばさんじゃなくて高二、です。十田里花子。」
怖いんだよ、この子。
「へー、里花子ちゃん桜とタメだ!よろしくね。」
桜ちゃんが言った。
うそ?高二!?思ったけど口にはしなかった。私は。
「うっそ!アンタ等年上?アンタ、童顔にも程がある!ってか、おばさん高校生?あー、制服着れば見れないことも無いか。」
そういえばみんな制服で私だけ私服だ、しかし失礼この上ない。しかも話脱線してるし。
「私は、家で髪型直してました。そうしたらここに。」
「桜も学校で髪直してた!?どういうこと?」
私と桜は目を見合わせた。
「アタシも放課後カラオケのトイレで髪直してた。アンタ等は?」
真由が樋村さんと草狩さんを見る。
「俺はトイレで…、」
草狩は言葉を切る。なに?
「トイレに居た。」
真由がニヤニヤ笑う。
「なにやってたの?」
「なんでもねぇよ、バカ!」
「何よ。」
また話がズレそう。
「樋村さんは?」
この人怖いからやなんだけど、軌道修正しなきゃ。
「……え?」
なんかツンツン、目が泳いでる。顔色悪くない?
「樋村さんはどうしてました?えっと、気分悪いんですか?」
樋村さんは決まり悪げだ。
「おー、俺はやっぱ髪型直してた。
ってかこういう訳わかんないの苦手なんだよ!怖いじゃん?」
意外とツンツンが1番繊細なのかも…。言わなかった。私は。
「なーに、ツンツン。怖がり?」
真由が草狩さんのときみたいににやける。
「うぜぇー…。お前とちびっ子は能天気なんだよ!なんで焦んないの?」
樋村さんは頭をぐちゃぐちゃに掻く。ワックス台なし。
「確かに、俺ら知らないとこになんでか居るだろ?それで多分、無国籍じゃん、そうしたら俺ら野垂れ死ぬぜ?」
草狩さんが言った。
よく考えるとかなりピンチ。
「どうしたら、いいんですか?」
『簡単な事ですよ、うせ物を見つければいい。』
「誰!!」
樋村さんが叫んだ。ホントにビビりなんだ。
『ようこそ、合わせ鏡に。お待ちしておりました。』
黄色い道の上に二足歩行の猫が立っていた。
こんな道なかったよ。
「!…お前誰なんだよ?」
樋村さんは早口だ。しかたない私だってこわい。
猫に二足歩行されると洒落にならない不気味さがある。
『何、私はしがないケットシーですよ。そちらのレディにならお分かりになるのでは?』
猫は私を見る。
みんなも私を見る。
「どういうことよ?」
真由が言う。私だって知るか。
「ケットシー…、は確か、イングランドのほうの猫妖精ですよ。チュシャ猫とか、長靴を履いた猫なんかがそれです。でも、私はお伽話とかで読んだだけで…知識だけです!この、人、なんか知らない。」
だから私を見ないでよ。みんな怖いんだから。
『ご名答ですよ、レディ。』
夜会の衣装を来た猫は笑う。不気味。
「だからなんだっていうんですか?」
キモいよ!!こっち見ないで。
『そして、この国の名前はガンジタ-アルビカンス。ブラウンのレディならお分かりで?』
今度、猫は真由を見た。やっと力が抜けた。
今度は真由の顔が強張ってる。
「たしか、ガンジタ膣炎とかの性病になる常在細菌よね?おむつかぶれなんかも。なんでそんなのが…」
国の名前なのはかなりおかしい。私もそう思う。
『便宜上、それっぽいので使わせて頂きました。
私も猫妖精ではありません。便宜上の名前が必要なのでお借りしました。』
なにそれ。
「きちんと説明してよ。」
桜が言った。低い声音にドキリとする。
「ってか、なんで性病とか知ってるんだ?経験者か?」
草狩さんがいう。確かにね、この人なら、
「違うわよバカヤロウ。アタシ看護学生だから。」
意外だなー。
『あなた方は合わせ鏡に導かれてこちらに来ました。私はただの案内役です。
この世界は貴方方の知識により構成されています。
なのであなた方の想像の範囲外のことは起こりません。
この街だって、だれかの知識の中の町並みでしょう。』
猫がそういうと草狩さんが挙手した。
「俺だと思う。前にユニバのオズに行ったときに見たのはこんな感じ?だった。
あとドラクエとファイナル。」
『そういう事です。』
「だから何!?桜達は何の為にここに連れて来られたの?」
桜はロリータキャラだと思ったけど意外とキビキビしてる。
『リトル・レディ。それはこれからお話することですよ。どうか話の腰を折られませんよう。』
桜はむっとしてる。だって今のは完璧に厭味だ。
『この合わせ鏡の世界には、うせ物に満ちています。
あなた方はここにうせ物を探しに来たのです。今日はレディ。あなたのうせ物を探しに来られたのですよ。』
猫は私を見た。うせ物?
「…私、べつに何も無くしてない、です。」
猫がガン見してくる。やめてよ。
『いいえ、無くした筈です。
遠い冬の霧に、夏の朝露のしたに。』
「…わけわかんない。」
とりあえず猫こっち見んな。
「自分で、思い出せって事?」
真由が猫を睨む。
猫は笑う。それだけで十分。
「見つければ、帰れるよな?」
樋村さんが言った。
猫は頷く。上弦の月みたいな双眼は不快感しか与えない。
「どうやって探すんだ?」
草狩さんはそこら辺を見回す。確かに難しい気がする。私は何を無くしたかもわからない。
『それはあなた方に任せます。』
1番困ります。
『では長居は無用ですね。』
待って!と何人かが留めようとしたけど、それより速く猫はドロシーよろしく、靴を打ち鳴らして消えた。
+ + +
猫が消えた後を見ながら、何だか力が抜けた。
結局どうすればいいか分からないままなんじゃ・・・。
「結局どうすればいいか分からないんじゃん!!」
樋村さんはビビリだ。
「本当ですね。私の何を見つければいいかも分かりません。」
「じゃぁ、とりあえず・・・」
同時にそういったのは、真由と草狩さん。
「・・・・・」
「・・・どうぞ。」
譲ったのは草狩さん。
「・・・とりあえず、協力しなきゃいけないってことは分かったんだから自己紹介くらいしとくべきなんじゃない?
私は炭山真由。高一。あんたは?」
真由は桜を見た。
「桜はー、岸和田桜っていってー、高二。」
「俺は、草狩良平。高三。模試近いから早く帰りたいんだけど。」
威張るように腕を組んでいる草狩さん。うざいな。
「私は、十田里花子。高二・・・です。」
「で?ツンツン崩れは?」
真由はこの人の事嫌いなんだろうか?
「・・・・俺は、樋村和樹。高二、だけどまだ誕生日来てないから16。」
どうでもいいかも。
んでもって、振り出しに戻る。
「ちょっと、何無くしたか分かったの?」
知るか。
「これってなんでもイイのかな?」
桜が言う。何でもが世の中一番困ると言われる選択肢の一つだ。。
「じゃあ、とりあえず決めてみて探してみたらいいんじゃない?」
珍しく建設的な発言。
「そうですね・・・。」
考えてみる、探し物・・・。探さなきゃいけないって事は大事なコレクションかなんかだったとか?
あたしのコレクションって言えば魔術的なアレかな?
「探し物をするために、探すものを探すのか?矛盾してんね。」
樋村さんが言う。案外難しい事を知っている。
「あんた意外と賢いの?」
アタシは黙ってたけど真由は口に出した。
「わー、うざい。中学で習うじゃん。漢文!」
春暁とかね。
「あんた明らかに頭悪そうじゃん。」
「お前もじゃん!!」
みんな思ってる。二人とも馬鹿そう。
「あたし、一応常に学年5番以内だから。まぁ定員は四十人だけど。」
意外な事実。
「俺だって頭悪いとこだけど、200人中50番以内だし!」
こっちも以外。
「意外と頭良いんだね、二人とも。」
桜が言った。口挟まなきゃいいのに。
「だろ?坊主みたいなヤツに限って意外と馬鹿なんだよ。」
また言わなきゃいい事を・・・。
俺旧帝大のK大工学部がA判定だぞ。とか何とか言ってる坊主・・・、草狩さんと湧き立つその他をほって置いて私は考える。
魔術的なコレクションで私が失ったもの・・・・。
「あっ・・・。」
アレ・・。
「何?何か浮かんだ?」
桜が覗き込む。
「はい・・。多分アレだと思う。」
「何?」
何人かの声がハモる。
「お姉さんから貰った魔石。」
「マセキ?んだそれ?」
樋村さんが言う。
「ルーンを刻んだ天然石です。薄ピンクのキャッツアイ。」
「猫目?」
樋村さんと草狩さんは分からないらしい。
まぁ当然。男には縁のないものだ。
「親指大のピンクの石です。それでソウェルっていうルーンが刻んであるんです。ハリポタのおでこに在るみたいなマークなんですけど。」
それぞれ想像は出来たらしい。
「いつ失くしたんだ?」
「小学生の頃・・、同じ趣味の高学年のお姉さんから貰ったんです。」
同じ趣味と言えば、それぞれ含む所があるらしくそれぞれ曖昧な反応を示した。
「あれじゃないの?同級生に取られたとか?」
真由に言われたがそれは無い。
「無いと思います。小規模な学校でそれなりに個性には理解があったので。」
ふーんと、微妙な反応。何よ。
「じゃあ、やっぱ保管場所の近くじゃないのか?」
草狩さんは言う。
「私の部屋の、机の引き出しに仕舞ってありましたけど・・・。」
ここからあたしの家に向かうのは不可能ではないか?
「ここに里花子ちゃんの家みたいなのないの?」
桜が言う。そんなうちはこんな中世の建築じゃない。
でも、よくよく見回してみると・・・。
区画がうちの近所に似ている。
「家の建ち方がうちの周辺と似てますね・・・。」「里花子ちゃんち?」
「はい。…引っ越す前の家ですけど。」
あの向こうに見える広間は、お姉さんから石を貰った空き地に似てる。
よく遊んでた場所。
「で?あんたんちは?」
真由が言う。
あの向こうに見えるすっぽりと一コマ空いた区画。おそらく、昔家の隣に会った空き地。
「あの白の家です。」
真っ白な、窓枠や戸さえも純白の建物。それが亡き我が家だ。
「じゃあ、行こう。」
草狩さんが言い、歩き出した。みんなそれに倣う。
「鍵。かかってるぞ?」
純白の陶器で出来たドアノブを回して草狩さんが言った。
たしか、合い鍵はポーチュラカの鉢植えの下だ。
無機質で真っ白なポーチュラカを退けて、鍵を取る。鍵も言わずもかな純白。
「入るよ。」
真由が言う。
+ + +
鍵を回しドアを開けて中に入る。
内装は白いことを除いては私の記憶と相違ない。
「で?どこにあんのよ?」
無くしたから捜すのに知る訳ない、これだから、濃いキャラは嫌い。
「無くなるまでは、学習机の鍵付きの引き出しに入れてありました。」
「じゃあ、行ってみようよ!」
桜が部屋の場所も聞かずに階段を上る、まあ合ってるけど。
2階の西側の部屋――西日が当たるからあんまり好きじゃなかった――のドアを開ける。入って左側に学習机があった、鍵付きは右手側だ。統計をとったわけじゃ無いけどだいたいそうだ。
「学習机ってコレ?鍵は?」
真由が机の前まで押し進む。
「あ、掛かってません。」
「ふーん。」
真由が引き出しを開ける。
「ねぇ?石って、コレ?」
真由が親指大のピンクの石を持ち上げる。それだ。
「普通にあるじゃん。」
草狩さんが言う。私もびっくりだ。
「じゃあさ!これ見つけたってことは帰れるの?」
桜が言った。
だけど、なんの変わりも無い。
「冗談じゃねぇ!」
樋村さんが半泣きで叫ぶ。
「何の変化も無いですね。外はどうでしょう?」
何人かが、行ってみよう、とか言ってそれぞれ外に向かう。
「あ、おばさん。とりあえずコレ。」
真由が石を投げてよこす。
キャッチした瞬間。
石の中の光が放出された。
+ + +
――まったく、里花子にも困るわ。――
――ほんとに、カルト教壇のと仲良くなるなんて――
――正確にはカルトの子供な?――
両親の会話が
聞こえる。
――なんか、唯ちゃんから変な石貰ったんだって?――
唯ちゃん。お姉さんだ!
――ほんとか?後で神具だ、とかいってぼったくられるんじゃないのか?――
――そうねー。
ねぇ?捨てちゃおうか?もし集金に来られてもモノが無ければ話にならないわけだし。――
――そうだな。でも里花子はどうする?――
――あの子には妖精さんが持っていったって言っておけば問題ないわよ。――
忘れてた。無くして捜してたときにお母さんにごまかされてそのままだったんだ。
――ほんとに里花子にも困るわ。――
+ + +
瞬きした後、目を開けると私はドレッサーの前に座っていた。
「戻って、きた?」
手にはちゃんと石が握られていた。
私は少しの胸の痛みでその石を直視出来ないでいた。
------------------------あとがき
今回、設定甘いです。
さつま揚げより甘いです。ざらめ砂糖です。
吐き気がします。
すまそーん