桜女

○○県○○市在住の澁谷 京香さん(17)草芽 友里さん(17)が昨日未明に失踪

2人は花見の途中で荷物などはそのまま置いてあった。

警察は全力をあげて捜索中であるが未だに見つからない。



                         『∞∇新聞』より抜粋




「京香!早く、場所取りしなきゃ!」
「待ってよ!そんなに急がなくても全然誰もいないよ此処。」
京香と友里は花見に来ていた。
有名な花見スポットという事で朝から場所取りに聞いた2人だが、
何処もいっぱいになりつつあり、場所を探して少し離れた一本の桜の木を見つけた。
「ふぅ、やっと場所が取れた。
 後は皆がくるのを待つのみ。」
「そうだね、でもこの桜やけに紅くない?」
友里は上を見上げて言った。
「でもその方が綺麗じゃない?
桜ってさ、桜色って言いながらも本物って案外白いもん?」
「そだね。」
頭上には紅梅色のサ ク ラ・・・



       +    +    +    +    +

目が覚めると、大きな木の根元でした。
どうして此処にいるのかは不思議でしたが、
まだ正常に働かない頭では思いつきませんでした。
ぼんやりと木の上を見上げ、花を見つめました。
視界の色がはっきりとはまだ見えません
花は小さく可愛らしい形で、朝露でしょうか?
水が滴っています。



2人近づいてきました。

そのうちの一人に視線を送ります。
人間は普通視線に気がつくものじゃないでしょうか?
彼女は気付く素振りも在りません。
この桜やけに紅くない?
彼女は一緒に来た子に話し掛けます。

サ ク ラ?

この木は桜なのか。
そう思った途端。
目に色が戻りました。



確かに、紅い桜が赤い滴を滴らせています。



アカイシズクヲ。



ぽたり・・・、ポタリ・・・・、

ぽたり・・・・、ポタリ・・・・、

ぽたり・・・・。ポタリ・・・・。

ぽたり・・・、ポタリ・・・・、

ぽたり・・・・、ポタリ・・・・、

ぽたり・・・・。ポタリ・・・・。



櫻は皆往々に一定の拍を刻みながら、

アカイシズクを滴らせます。



怖い・・・・、こわい・・・・、

コワイ・・・・、コワイ・・・・。



この子達は平気なのでしょうか?

今にも、逃げ出そうとして私は腰を上げます。











私は桜でした。

桜の根は私から生えていました。
地面に寝転ぶ私の体に
この大きな桜は根をはっていました。

ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?
ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?
ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?
ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?
ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハダレ?



自分の事なんてわからない。

なんでここにいいるのか、なんでこうなっているのか、
なんで私の体が桜を支えているのか。







なんで私の血が桜を染めているのか?







何故?なぜ?ナゼ?ナゼ?何故?なぜ?ナゼ?ナゼ?何故?なぜ?ナゼ?ナゼ?
何故?なぜ?ナゼ?ナゼ?何故?なぜ?ナゼ?ナゼ?何故?なぜ?ナゼ?ナゼ?
何故?なぜ?ナゼ?ナゼ?何故?なぜ?ナゼ?ナゼ?何故?なぜ?ナゼ?ナゼ?
何故?なぜ?ナゼ?ナゼ?何故?なぜ?ナゼ?ナゼ?何故?なぜ?ナゼ?ナゼ?





       +    +    +    +    +



「あ!そうだ。京香。」
友里は京香に話しかけた。
「何友里ちゃん?」
「あのね・・・前さぁ、聞いた話なんだけど、
 桜が赤くなるのって桜の下に埋められた死体の血のせいとか言う噂。
 すっごいホラーじゃない?」
京香は上を見てうめきました。
「やだぁ友里ちゃん、怖くなるじゃない。」
「噂よ。うわさ。」
でもさぁ、友里は息をつきながら言いました。
「もし、これがそうだったら可哀想だよね。」



{なら、あなたの血をちょうだい。}



「え?」
                             桜女}